年金事務所等の調査対応

年金事務所や労働基準監督署は、各企業において法令違反がないか、適切な取り扱いがされているか確認するため定期的に調査をすることがあります。近年、企業のコンプライアンス(法令遵守)が重視されており、是正勧告を受けると社内だけでなく社外的にも大きな影響を与える可能性があります。
さらに、監督官による法違反への指導は、書類送検という司法処分を行うことができる為、決して無視することはできません。

まずは、いつ調査が入ったとしても、経営にあたり致命的な法令違反がないように準備しておくことが大切です。調査前の対策、実際の調査時立会、指導・勧告を受けた場合の対応まで豊富な経験をもとに全面サポート・アドバイスいたします。

調査について

  1. 1事前連絡

    通常、調査が入る前には調査目的や調査する帳票が記載された書面等で事前連絡があります。まれに突然調査に来ることもありますが、責任者が不在であったり、当日の対応ができなければ別日程に変更してもらえる場合もあります。ただし、法律で、労働基準監督署の監督官は事業所への臨検の権限があり、臨検を拒んだり、妨げたり、尋問に応えなかったり等すると罰金に処せられることになるので、むやみに断るのは避けるべきでしょう。

  2. 2年金事務所の調査

    調査の目的は『社会保険の加入漏れがないか』『社会保険加入日が適正か』『報酬の申告が正しいか』などです。

    準備する主な書類は以下の通りです。

    • ・算定基礎届
    • ・算定基礎届総括表
    • ・算定基礎届総括表附表(雇用に関する調査票)
    • ・賃金台帳、出勤簿(タイムカード)
    • ・厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎届(対象者がいる場合)
    • ・源泉所得税領収証書
    • ・提出済の適用関係諸届
    • ・事業主印

    調査では、主に以下のことが確認されます。

    1. ①アルバイト等の非正規社員の加入漏れがないか
    2. ②報酬額の申告が正しいか
    3. ③賞与支払届が提出されているか
    4. ④給与の変動にあわせて変更届が提出されている
    5. ⑤社会保険加入日等が適正か
    <未加入者が見つかった場合>
    最大で2年間(24か月間)遡求して保険料が請求される可能性があります。
    月に約12.5万円の給与をもらうアルバイトが、保険料を2年間遡求されると、会社負担分と従業員負担分をあわせると90万円を超える請求額となります。
    (標準報酬月額126千円、社会保険料率30%で計算)
    同様の形態で働く方が5人いれば、90万円×5人=450万円もの金額になります。
    <届出の報酬額や加入日が誤っていた場合、賞与の報告を提出ていなかった場合>
    社会保険未加入の場合と同様に最大で2年間(24か月間)遡求して正しい手続きを求められる可能性があります。保険料に差額が生じた場合、保険料の納付も求められます。
    <社会保険の未加入会社への調査>
    最近、増えているのが、社会保険の未加入会社への調査です。日本年金機構は、国税庁の納税情報を共有することで社会保険未加入事業所を把握しています。例え、働いているのは社長と配偶者のお二人だけで、他に社員やアルバイトがいないとしても、会社として加入を逃れることはできません。
  3. 3労働基準監督署の調査

    調査の目的は『労働基準法等の違反がないか』です。主に次の4つの場合があります。

    <定期監督>
    毎年度実施されます。事業所のリストを作成して計画的に巡回するか呼び出しを行い法令の遵守状況を確認します。
    <申告監督>
    労働者から企業の法令違反について申告があった場合に行います。
    <災害時監督>
    一定規模の労働災害が発生したときに、原因究明と再発防止のために実施します。
    <再監督>
    過去に是正勧告を行った企業に対して、改善状況の確認のために行います。改善が見られなければ刑事事件となることもあります。

    賃金、労働時間、休日、健康診断、労使協定提出等が労働基準関係法令に則って運用されているか確認されます。

    1. ①法定労働時間が守られているか(長時間労働が行われていないか)
    2. ②未払い賃金(残業代)がないか
    3. ③就業規則の作成・届出がされているか
    4. ④労使協定(36協定など)が締結・提出されているか
    5. ⑤健康診断が実施されているか
    6. ⑥従業員との労働契約が正しく結ばれているか

是正勧告

  1. 1是正勧告とは

    『是正勧告』とは、労働基準法や労働安全衛生法等の労働関連法規に基づいて、企業が是正すべき箇所を労働基準監督署から指摘されるものです。一定期日までに『是正報告書』で改善点を報告しなくてはなりません。

  2. 2是正勧告を受けたら

    是正報告書の報告期限は2週間程度と短いのが通常です。(場合によっては延長してもらうことも可能です。)

    是正勧告書は『法律違反があるので是正するよう求める部分』『法律違反とまではいかないが改善した方がよいと労働基準監督官が考える指導部分』に分かれます。
    明らかに前者はいくら費用が掛かっても改善しなければなりませんが、後者の場合はよく検討してからにすべきです。
    また、是正勧告を受けたにもかかわらず無視したり、形式的に改善したと見せかけたりすることは大変危険です。対応によっては悪質とみなされ、最悪の場合、逮捕、送検される可能性があります。
    いずれにせよ、是正勧告を受けた場合には専門的な見地からの早急な対処が必要となります。ぜひ、専門家である我々にご相談くださいませ。

対策

  1. 1事前対策とは

    調査があっても問題がないような労務管理を行う体制を普段から作っておくべきですが、まずは現状を把握し、労働基準関係法令に違反していているリスクを抽出していきましょう。
    例えば、法定3帳簿(労働者名簿、出勤簿、賃金台帳)等を完備し、就業規則を作成し周知するなどがとりかかりやすいところです。
    また、最低限の労働基準関係法令を理解しておくことも肝要です。

  2. 2事後対策

    「是正報告をどのようにすればいいか分からない」場合や「今後の対策がわからない」場合など、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。同じ是正勧告を受けないよう、御社にあった労務管理を提案いたします。

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