社会保険手続き業務

仕事帰りに足を滑らせてケガをしたお姉さんの話

明石のスタバでこの原稿を書いています。

 

仕事帰りによくスタバを利用します。

本を読んだり、法改正の資料やリーフレットをチェックしたり、仕事の段取りを考えたり、スマホをいじったり・・・

もちろん職場や家などでもできることですが、好んでスタバでやっています。

職場と家、それぞれの緊張感を足して半分にした、職場ほどはないけれど、家より緊張感をもてる環境が心地よく、家に帰る前に自然と足が向きます。

 

このよく利用するスタバにも様々な人が来ています(当たり前ですが)。

一人でPCを広げ仕事をしているサラリーマン、お喋りに夢中の大学生のカップル、保険を勧めている保険のセールスレディーとそのお客さんなどなど・・・

 

そんな中、少し怒ってる雰囲気の女性がいるのが目に入りました。

待ち合わせでもしていたのか、席についてもドリンクの注文をせずにいます。

しきりに携帯電話を確認しています。

電話を掛けたり、メールをたびたび送ったりしています。

 

流石に30分以上待っていたのでドリンクを注文して席に着いたようですが、また携帯電話とにらめっこです。

 

その女性の席が丁度前の席だったこともあり、貧乏ゆすりやため息などが注意を引きます。

その女性がとるイライラ行動にしばらく付き合う羽目になりました。

 

 

と、ようやく待ち合わせをしていた女性が現れました。(結局、1時間以上遅れてきたのではないでしょうか)

 

やっとのことで現れたお連れの女性ですが、何やら様子が変です。

顔色が悪く、松葉杖をついています。

1時間以上(怒りながら)待っていた女性も、その姿を見て驚いて声が出ない様子です。

 

様子をうかがっていると・・・

 

もともと今日は仕事終わりにスタバで合流して、レイトショーで映画を見るつもりだったようです。

しかし、その遅れてきた女性は、職場を出て、電車に乗り、駅を出てスタバに向かう途中の階段で足を滑らせ転落し、動けなくなってしまった。病院に行くと骨折していたというのです。

 

待ってた女性もすごいですが、骨折したのに来た女性もすごいです。よっぽど見たい映画だったのでしょうか。

結局、骨折の話に花が咲いてたので、映画には行かなかったようですが。

 

 

ふとこの仕事帰りにケガをした女性が病院で使った保険は何だったのか気になりました。

 

 

会社で働く人は状況によって病院で2つの保険を使い分けることになります。

 

ひとつは、「健康保険」です。

病院で健康保険(被保険者)証を提示することで、医療費負担が3割で済むなど利用する機会も多く、よくご存知かと思います。

 

もうひとつが「労働者災害補償保険(以下、「労災」といいます)」です。

保険証などありませんし、使う機会も多くないので、ご存知ない方もいるかもしれません。

こちらの保険は、基本的に自己負担なしで治療を受けることができてしまう優れものです。

 

 

この優れものの「労災」とは、どういった保険でしょうか?

少し説明します。

 

「労災」は、労働者が「業務災害」もしくは「通勤災害」による傷病等に対して使う保険です。逆に言えば、「業務災害」・「通勤災害」ではない傷病には使えないということです。

 

ちなみに「業務災害」とは、労働者が就業中に業務が原因となって被った傷病等をいいます。

 

一方、「通勤災害」とは、通勤によって労働者が被った傷病等をいいます。

このケガをした女性は、仕事終わりにケガをしたので、「通勤災害」に該当するように思えます。

 

この「通勤災害」でいうところの「通勤」とは、就業に関し、

①住居と就業の場所との間の往復

②就業の場所から他の就業の場所への移動

③単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

を、合理的な経路および方法で行うことをいいます。

 

しかし、移動の経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱または中断の間およびその後の移動は「通勤」とはなりません。

 

ここでのポイントは、「逸脱」と「中断」です。

 

逸脱」とは、通勤の途中で就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれることをいい、「中断」とは、通勤の経路上で通勤と関係のない行為を行うことをいいます。

 

つまり、今回の場合、本来の通勤経路を「逸脱」した状況でケガをしていますので、「通勤災害」とは認定されないでしょう。

残念(?)ながら、健康保険で診療を受診することになります。

 

ケガをした女性が健康保険を使って受診をしたかどうかまでは分かりません。

ただ、もし誤って労災を使っていたら、労災から支給されている医療費を一旦全額自己で負担して、後で健康保険に7割分を請求するような手続きが発生してきます・・・少々面倒くさいです。

 

通勤中のケガ、必ずしも「労災」となるわけではありません。

場合によって注意が必要です。

 

かくいう私も通勤経路を「逸脱」しています。ケガをしないよう慎重に帰るとします。

 

 

社会保険労務士 秋野 高大

 

(ここでは、労災について概要を記載したもので、詳細を記載していません。詳細については、厚生労働省HP等でご確認いただくか、個別に弊社へご相談ください。)

 

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